現在、主に使われている高血圧の治療薬について説明します。どれを使うかは患者さんの身体の状態とそれぞれの薬の長所、短所を考えて決められています。
1)ループ利尿薬(降圧利尿薬)ラシックス錠 など
尿と共に、体内の余分な水分・ナトリウム(塩分)を排泄し、血圧を下げ、むくみを改善する薬です。 また心不全の治療に、強心薬であるジゴシンまたはラニラピッドと共に使われます。
利尿薬は塩分を引き抜いてくれるので、他の薬剤と併用することで降圧効果が高まります。
短所として、脂質代謝や糖代謝に影響する場合があります。
カリウム値の低下も知られていますが、これが問題となる場合、カリウム剤やアルダクトンAが併用されます。
国際的研究では、日本は中国と共に塩分多量摂取国であることが分かっていますので、食生活で『塩気』を減らす工夫も必要です。
2)β遮断薬(βブロッカー)セロケン、アーチスト錠 など
交感神経の受容体(αとβがある)のうち、心臓の脈を速くするβ受容体の作用を抑えます。
心拍数を減らし、心拍出量を低下させることによって、血圧を下げます。
また、労作性の狭心症や頻脈性の不整脈にも有効です。
ぜんそく、慢性閉塞性肺疾患、心不全がある場合には、注意して用いられています。
徐脈(1分間の心拍数 50 未満のゆっくりした脈)が現われることがあります。
3)α1遮断薬(α1ブロッカー)カルデナリン錠 など
交感神経受容体のα1受容体は、血管壁に分布し、血管を収縮させます。
この受容体の作用を抑えることによって、末梢血管を拡張させ血圧を下げます。
特徴として、LDLコレステロールを下げる効果や、腎臓の血流保持効果があります。
前立腺肥大に伴う排尿障害にも有効で、泌尿器科ではしばしば用いられています。
服用し始めのころ、あるいは増量したときに起立性低血圧・めまいが現れることがあります。
また、女性で、尿漏れが現れることがあります。
4)カルシウム拮抗薬 アムロジン錠 など
血管平滑筋が収縮するためには、細胞内のカルシウムイオンが必要です。
この血管平滑筋へカルシウムイオンが流入する経路を閉じることにより、血管を広げ、血圧を下げます。
有効率が高いのが特徴であり、心臓の冠血管を広げる作用も強く狭心症にも有効です。
まれに顔面紅潮、動悸、頻脈、便秘、歯肉肥厚が現われることがあります。
代謝面に悪影響を与えず、合併症があっても使い易いことから、多くの患者さんが服用しています。
5)アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)レニベース錠 など
高血圧の成因の一つに、アンジオテンシンⅡという、血管を収縮させ血圧を高くする物質(体内物質)の関与があります。
ACE阻害薬は体内でアンジオテンシンⅡが増えるのを抑えることによって、血圧を下げます。 特徴として、心臓や腎臓の保護作用があり、心不全や蛋白尿の改善効果があります。
時に、空せきが現われることがあります。
6)アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤(ARB) ニューロタン錠 など
体内で作られたアンジオテンシンⅡが、血管平滑筋などにあるその受容体に結合するのを抑えることにより、アンジオテンシンⅡの働きを抑え、血圧を下げます。
また代謝性副作用が少なく、空咳の副作用もありませんし、その作用から心不全に対する有効性や腎臓に対する保護作用が期待されています。
少量の利尿剤との配合剤プレミネント錠が2006年秋に日本国内発売開始となり、有用性が高く評価されています。
7)選択的アルドステロンブロッカー セララ錠(2007年11月13日:日本国内発売開始)
従来、アルドステロンは、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系の最下流に存在し、腎臓の遠位尿細管において水やナトリウムの再吸収に関係するホルモンと考えられてきましたが、最近では、血圧の上昇に加えて心臓・腎臓・脳などに直接障害を引き起こすことが明らかになってきました。
セララは、アルドステロンの受容体であるミネラロコルチコイド受容体に選択的に結合することにより、アルドステロンの有害作用をブロックして、血圧降下や臓器保護を示します。
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