縁あって看護学校で「薬物と看護」の非常勤講師をやっています。このコーナーでは講義での一端を元に書きます。
まずは小テストから
下剤について誤っているのはどれか?
1)急性虫垂炎においては、穿孔の危険があるので下剤投与は禁忌である。
2)腸管閉塞においては、症状が悪化することがあるので下剤投与は禁忌である。
3)多量の硬い固形状の便があるときは、刺激性下剤で腹痛が悪化することがある。
4)ヒマシ油は、小腸内の有害物質が水溶性の場合はその体内吸収を促すので、禁忌である。
たかが下剤、されど下剤!
というのも、状態によっては下剤を使ってはいけない場合があるのです。
下剤投与の禁忌を整理して書くと次のようになります。
ア)急性虫垂炎⇒穿孔の危険がある
イ)腸管閉塞⇒症状が悪化
ウ)多量の硬い固形状の便があるとき⇒刺激性下剤で腹痛が悪化することがある。
エ)多くの下剤、特に大腸刺激性下剤⇒痔、骨盤内臓器の炎症、月経、妊娠時には通常禁忌
オ)大黄、アロエ⇒授乳中は禁
カ)ヒマシ油は小腸内の有害物質が腸溶性の場合はその体内吸収を促すので、禁忌
従って、問題の回答は4)です。
問題では腸溶性が水溶性になっています。
何らかの薬品を誤飲した時の治療にヒマシ油を使うことがあるのですが、この場合「なにを飲んだのか」正確な情報が必要になります。その情報が救命の決め手になることがあります。
T.M
便秘薬は身近な薬だけど、使い方を間違うと大変なことになるんですね。
酸化マグネシウムの副作用について、新聞報道がありましたね。
キタジマさんのコメントにあるように、「酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症」という記事が掲載されましました。
酸化マグネシウムの添付文書で重大な副作用追加改訂をうけて、厚労省は、これまで一般用医薬品として第三類薬に分類されていた酸化マグネシウムを含む制酸・緩下剤を第二類薬に追加しました。
ちなみに、第二類医薬品の販売方法として、「積極的な情報提供」は努力義務とされており、その実施に関し文書を用いることも努力義務とされていす。
高Mg血症の自覚症状らしきものを調べると、傾眠等、あまり前駆症状らしきものは見つけられませんでした。
当薬局でも長期服用されている方が多く、質問されることもあります。
死亡例はどちらも、全身状態が良くない方々だったので、窓口業務での説明に、困ることもあります。
併用薬の多いわが国では、1剤のみの結論とは考えにくいのでは?と思っています。
高マグネシウム血症の初期症状を調べると、悪心・嘔吐、口渇、血圧低
下、徐脈、皮膚潮紅、筋力低下、傾眠等となっており、併用薬があると因果関係が分かりにくいですね。
腎障害があったり、活性型ビタミンD3製剤を併用している患者さんでは、この副作用のリスクが高くなります。こうした患者さんの訴えに疑問を持ったら、医療機関で血中マグネシウム濃度を調べてもらうよう受診勧告をする必要があると思います。
酸化マグネシウムは便秘に対してとても有用な薬です。上手に使いたいですね。
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